研究概要 |
農業水利構造物の研究開発に関連する諸課題は, これまで主に論じられてきた建設・施工技術から維持管理へと移り変わりつつある. その中でもコンクリート損傷度を的確に考慮した農業水利施設に関する耐久性評価法の開発が急務な課題となっている. 本研究では, コンクリート損傷度を損傷力学理論により定義し, 水流による影響を強く受けた農業水利構造物の特質および非破壊検査の技術的課題を解決するために, 変状の異なる複数の構造体においてアコースティック・エミッション法(AE)と超音波法によるコンクリート損傷度の定量的評価技術の開発を試みることを目的としている. 平成19年度は, コンクリート損傷解析ソフトの構築を含めた定量的損傷度評価法の開発および農業水利構造物での適用性の検証を試みた. 平成20年度は19年度の結果を踏まえて, AE法と超音波法を組み合わせたコンクリート損傷モニタリング法の開発を試みた. その結果, コンクリート損傷度評価法DeCAT(Damage Estimation of Concrete by Acoustic Emission Technique)を構築し, 衝撃荷重を受けるコンクリート構造物の損傷と振動特性の観点から, コンクリート損傷を評価することに成功した. 本手法はコア・サンプルを用いて圧縮強度試験にAE計測を導入し, 損傷力学理論の観点から健全時の弾性係数の推定に基づく定量的損傷度評価法である. 実構造物への適用では,コンクリート構造物に加えて, コンクリート配管材などにも適用し, その有効性を確認した. 平成21年度以降は, 既往の試験研究より明らかになった問題点と課題を検証するとともに, コア・サンプルを用いない非破壊によるコンクリート損傷度評価法の確立する. 具体的には, 弾性波計測に基づく動弾性係数の定量的評価を行い, コンクリート損傷の非破壊評価技術の開発を試みる.
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