2009年度は、北海道の泥炭地の客土された水田において、水位、酸化還元電位、水田からのメタン排出量、表層水と作土水の溶存メタン濃度、作土層の平衡メタン濃度(以下、土壌ガス濃度)を測定し、水稲作付け期間のメタン動態を解明し、水田からのメタン排出の抑制について検討した。 酸化還元電位は、6月中旬から負に転じ-200mV以下となったが、落水後は+500mVまで上昇した。ガス排出量は、6月中旬以降増加し8月上旬にピークに達し、落水後ゼロ付近へと低下した。表層水の溶存メタン濃度は田植え後増加し、落水まで5μgCL^<-1>以上に保たれた。作土層の溶存メタン濃度も田植え後上昇し、6月中旬以降は落水まで500μgCL^<-1>以上に保たれた。土壌ガス濃度は、田植え後上昇し8月下旬に19%に達したが、落水後は低下した。 土壌中の気相率が5%、土壌の空隙率が50%とすると、定植からメタン総貯留量が最大に達した8月3日までの積算メタン排出量は14gCH_4m^<-2>と推定された。一方、同じ日の水田のメタンの総貯留量は、1.0gCH_4m^<-2>であり、総貯留量が排出量よりかなり小さいことが示された。このことから、湛水時土壌中で発生したメタンは一部が貯留されるが、大部分が速やかに大気に放出されることが示唆された。水田からのメタン排出を抑制するためには、作土層内のメタン生成そのものを抑制するような水・有機物管理が有効であることが示された。
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