(1)過疎集落の維持と荒廃の分水嶺を探るために、石川県輪島市旧門前町において、限界集落の調査を行った。その結果、病院への移動手段の喪失(自動車が利用不能になる)が、離村の決定的な要因である可能性が高いことを明らかにした。また、道路などの管理が集落の力に応じて縮小していることを明らかにした。農業の個人化が進んでいることがわかった。さらに、既往の研究では戸数を重視しているが、戸数だけで集落の力を測定することはできないことがわかった。集落の力は、戸数ではなく、人数、しかも元気な人の人数で測定すべきである.(2)鹿児島県阿久根市において、集落移転の成功事例を調べた.集落移転が住民には好評であることを明らかにした。また、集落移転を実施するためには、強力なリーダーが必要である可能性が高いことがわかった.(3)兵庫県養父市において、無人化集落の調査を行った.無人化後に集落とは、あまり関係がないと思われる施設ができていることがわかった。集落の特徴や伝統が生かきれているわけではない。(4)滋賀県多賀町で無人化集落の調査を行った。家屋が非常に荒廃していることがわかった。また、養父市同様、趣味的な家屋ができていた。これらと文献調査の結果などから、分水嶺が四つ存在するという仮説を立てた。農業集落としての分水嶺、集落としての分水嶺、生活基盤の分水嶺、さらに、集落改善の分水嶺(強力なリーダーの有無)の四つである。ただし、現時点でこれらをセンサスなどの既存のデータにつなげることには至っていない。
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