研究概要 |
本研究は,テラヘルツ波イメージング技術を用いた植物生体情報計測法の確立を目的としている。テラヘルツ波は,電波と光波の間に位置し,これまで植物生体情報計測にほとんど利用されてこなかった。そのため,テラヘルツ波を用いることでどのような植物生体情報を取得できるのかさえ明確になっていない。そこで本年度は,「テラヘルツ波計測により取得可能な植物生体情報は何か」を明らかにすることに焦点を絞り,(1)植物葉の水分状態とテラヘルツ波透過量の関係の解析,(2)テラヘルツ波透過画像計測システムを用いた水ストレス診断を行った。(2)では,葉の水分が失われるにしたがってテラヘルツ波透過量が上昇することを明らかにした。また,葉齢によりテラヘルツ波透過量が異なることも確認した。これらの結果は,テラヘルツ波透過量を計測することによって,葉の水分状態や老化のモニタリングが可能であることを示している。(2)では,高空間分解能テラヘルツ波透過画像計測システムを用いて,水ストレス処理前後のイチゴ葉のテラヘルツ透過画像を計測した。水ストレス処理により,葉面の平均テラヘルツ透過量は3.9倍になっていた。この結果は,テラヘルツ波透過画像計測システムを用いることで,葉面における水分状態の変化を二次元的に捉えることが出来ることを示している。さらに,水ストレス処理後のテラヘルツ波透過画像において,局所的に透過量が著しく上昇した領域が確認された。この領域では水分が著しく失われていると考えられ,水ストレスが局所的に急激に進行したものと考えられる。このような葉面における局所的な水分状態の変化は、目視では確認できなかった変化であり、テラヘルツ波透過量画像計測システムを用いたことで初めて明らかにできた現象である。
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