研究概要 |
本研究は, テラヘルツ波イメージング技術を用いた植物生体情報計測法の確立を目的としている。テラヘルツ波は, 電波と光波の間に位置し, これまで植物生体情報計測にほとんど利用されてこなかった。昨年度の研究では, テラヘルツ波を計測することにより葉内水分量に関する情報の取得が可能であることを確認した。本年度の研究では, テラヘルツ波イメージング技術を用いて, 植物葉の環境応答に関連した生体情報の取得を試みた。具体的には, (1)変動する環境条件下での蒸散機能のリアルタイム解析, (2)植物ホルモン(ABA)に対するレスポンスの解析を行った。(1)に関しては, 光環境変化に対する応答の解析を行った。約1時間暗処理したインゲンマメ葉に光照射を開始して明条件(約40分間)とし, その後, 再び暗条件(約30分間), 明条件(約40分間)と光環境を変化させた。暗条件から明条件とした直後に, テラヘルツ波透過量が急激に低下する現象が確認された。この間, 光照射開始に伴って急上昇した葉温が次第に低下していく(気孔が次第に開く)現象が認められた。この結果は, テラヘルツ波透過量の変化が気孔運動をとらえた可能性を示唆していた。(2)では, 10^<-3>MのABA溶液を葉面に塗布し, この影響の解析を行った。ABA塗布処理により葉温の上昇が観察され, 気孔閉鎖が誘導されたことが確認された。この間, ABA塗布処理領域のテラヘルツ波透過量は, 対照区に比べて高く維持されていた。この結果は, テラヘルツ波透過量を連続的に計測することにより気孔開度のモニタリングが可能であることを示唆するものであった。
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