本研究における気温推定法は、アメダスポイントと推定地点との気温差を2つの要素値[推定地点固有の値(T_<ESC>)と基準地点(アメダス等の気象観測地点)固有の値(T_<SSC>)]に分離し、放射冷却の強度との関係式から各要素値を推定する、Ueyama(2008)の手法を応用して開発する。この手法は、放射冷却強度指標(RCS)を変数として、T_<ESC>値およびT_<SSC>値の推定モデルを作成するものである。 最終年度である本年度は、昨年度までの2年間で開発した気象庁配信のGPVデータから求めたRCS値によるT_<ESC>値およびT_<SSC>値の推定モデルを検証した。さらに、多数地点の気温観測を不要とする新しい50mメッシュ気温推定法開発のため、領域気候モデルによる気温地点間差推定法の開発に取り組んだ。 GPVデータから作成したRCS値と作成した各地点の気温差推定モデルの精度を検証した結果、開発したモデルは、地形が複雑な中山間地域において、T_<ESC>値は平方自乗平均誤差(RMSE : Root Mean Square Error)0.5℃で、T_<SSC>値はRMSE0.2℃で日平均値を推定した。このこどから、メソ数値予報モデルの気温予測に応じた気温推定を農地単位で予測することは可能と考えられる。また、領域気候モデルTERC-RAMSの開発機関である筑波大学及び、TERC-RAMSによる研究実績を有する四国研究センターの研究者と共同で、300mの高解像度でTERC-RAMSを運用する手法を確立し、数値モデルによる気温地点間差推定法を開発した。 本技術は、作物の高温回避や凍霜害回避、そして精密な生育、収量予測を可能とするものであり、特により生産性の高い農業が求められる中山間地農業の発展に寄与するものである。また、本研究で開発された技術は、多大な労力が必要なことから普及が進まなかった、50mメッシュ気温図の普及を促進する。
|