本年度はまず、腸上皮細胞とプロバイオティック乳酸菌、特にBifidobacteriumの嫌気的培養法の確立を行った。英国ローウェット研究所で行われている嫌気的培養法を基にしてCaco-2細胞とBifidobacteriumの嫌気培養を行い、Bifidobacteriumが好気条件下よりも生育しやすい条件・方法を確立した。さらなる効率化のために、96ウェルプレートによるスクリーニング系の確立を試みたが、96ウェルプレートでは遺伝子発現を検討するための試料が細胞、菌体ともに充分量確保できないことがわかった。スクリーニングの効率化のためには、96ウェルプレートを使用し、培養上清中の一種類のタンパク質の発現をELISA法により確認するという手法がもっとも良いと考えられるが、それに最適と思われるタンパク質が現在のところ報告されていない。そのため、本年度は有効なプロバイオティクスのスクリーニングに適したタンパク質を明らかにすべく、嫌気的培養法を使用して、Caco-2細胞とプロバイオティック乳酸菌との相互関係を解析した。スーパーアレイを用いて、プロバイオティック乳酸菌がCaco-2細胞に与える影響を網羅的に解析したところ、数種の遺伝子が顕著に変化することが明らかになった。これらの遺伝子には既報のも含まれるが、未だプロバイオティック乳酸菌の影響を受ける遺伝子として報告されていないものも含まれている。現在、これらの遺伝子発現の変化がタンパク質レベルに反映されているかを検討するとともに、有効なプロバイオティクスのスクリーニングに最適と思われるタンパク質を検討中である。
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