本年度は、ブロイラーと天草大王のストレス感受性に関する品種間差を主に行動学的手法を用いて明らかにした。 1. 在来鶏およびブロイラー鶏における新奇環境導入後の行動変化に床材の種類がおよぼす影響に関する実験 3週齢のブロイラーと天草大王をそれぞれ2群にわけ、オガクズ床(0区)とワイヤー床環境(W区)のケージで単飼し、導入直後および、1、2、3、4週間後に行動観察を行った。1週目における天草大王の増体率は、0区で他の区に比べて低い値を示したが、その後は区間に有意差は認められなかった。ブロイラーは調査期間を通して、天草大王より伏臥姿勢を多く発現した。嘴を使う行動の合計は、1日目で両鶏種ともに0区がS区より多く、1週目以降の天草大王ではその後も同様であったが、ブロイラーでは環境間に差は認められなくなった。 2. 在来鶏およびブロイラー鶏の急性ストレスに対する反応の差異に関する実験 2種類の床材において天草大王とブロイラーを飼育し、9週齢時に各種の行動テストを行った。床材がおがくず(ブロイラーOB区、天草大王OA区)およびワイヤー(ブロイラーWB区、天草大王WA区)のケージに1羽ずつ導入し、Tonic Immobilityテスト、オープンフィールドテスト、ホークテスト、および採食テストを行った。TIテストにおいては品種および飼育環境間で有意な差は認められなかった。オープンフィールドテストでは、ブロイラーの佇立視覚探査行動が天草大王に比べ有意に低く(P<0.01)、伏臥行動は有意に低くなり(P<0.01)、天草大王が活動的な行動を多く示した。また、ホークテストにおいて、飛び上がり行動および佇立視覚探査行動で、WB区がOA区およびWA区に比べ低い傾向がみられ(P<0.1)、WB区がOB区に比べ模型に対する反応が少なかった。採食テストでは、採食行動でWB区がOB区に比べ高い傾向がみられ、採食量もWB区がOB区に比べ多い傾向がみられた(P<0.1)。
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