鶏糞処理過程では高濃度のアンモニアを含む悪臭ガスが発生しやすい。そのため悪臭除去施設が多く設置されているが、そこから排出される脱臭排水は同様に高濃度の窒素を含むためその処理が問題とされている。本課題ではこの脱臭排水中の窒素除去を養鶏施設由来の微生物源を用いて行うことを目的とし、本年度はそのために微生物源の窒素代謝反応を担う微生物の存在について、特定微生物に特異的なDNAの存在を調べることにより検討した。 養鶏施設における微生物供給源として、排泄後1日以内の生鶏糞、鶏糞貯留槽内の生鶏糞、乾燥処理後の鶏糞、および比較用サンプルとして土壌を採取した。物性測定の結果、生鶏糞、貯留槽鶏糞、乾燥鶏糞からはアンモニアが検出され、中でも貯留槽鶏糞が特に高い濃度であった。硝酸および亜硝酸は僅かまたは検出限界以下であった。total DNAの抽出を行い、全バクテリアに共通の配列を用いたprimerによるPCR反応を行った結果、すべてのサンプルから目的の長さの断片の増幅が見られ、DNAの抽出がPCR反応の阻害物質を含まず行われたことが確認された。アンモニア酸化細菌に特異的な配列を用いたprimerによるPCRを行った結果、生鶏糞は4サンプル中1サンプル、乾燥鶏糞は4サンプル中1サンプルしか断片の増幅が見られなかったが、貯留槽鶏糞は2サンプル中2サンプルの増幅が見られた。また土壌については4サンプルすべてから増幅が見られた。脱窒細菌に特異的な配列を用いたprimerによるPCRを行った結果、貯留槽鶏糞2サンプル、乾燥鶏糞3サンプル、土壌4サンプルにおいて増幅が見られた。鶏糞は排泄直後にはアンモニア酸化細菌も脱窒細菌も存在頻度が低いが、貯留中に両微生物の増殖がおこり、乾燥処理によりアンモニア酸化細菌だけが減少するという変動が有ると推測された。
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