これまでの研究から牛糞に元々内在している水素生産細菌を利用して水素発酵が可能であり、その水素発生の温度ピークは60℃と75℃に2つ存在することを明らかにした。そこで牛糞を種汚泥、グルコースを基質とした集積培養を60℃と75℃で試みて、集積される細菌種の菌叢とその水素発酵特性を解析した。 乳牛の糞と尿を混合して蒸留水で希釈したスラリーを調整した。そのスラリーを60℃と75℃で前培養を4日間行った。その後、グルコースを基質とした人工培地で5-6回の連続バッチ培養(2日間間隔)で集積培養した。その60℃と75℃培養で集積された細菌群のDGGE解析の結果、60℃培養では一本のバンド、75℃培養では3本のバントに集積されていた。DGGEバント解析の結果、60℃と75℃培養ではそれぞれThermoanaerobacterium thermosaccharolyticumとCaldanaerobacter subterraneusに高い相同性を示す細菌が優占化していることが分かった。リアクター体積当りの水素発生量(mmol/L)は60℃と75℃培養で差はなかったが、菌体当りの水素発生量(mmol/g-VSS)は75℃培養の方が多かった。グルコース分解率は、60℃培養の方が高かった。グルコース1モル当りの水素発生量(水素収率、mol/mol-glucose)は、75℃培養の方が高く、2.65であった。この収率は、報告されている値と比較して高く、本研究条件では、高度高温条件は高収率な水素発生に有利であると考えられた。
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