研究概要 |
中温菌や至適増殖温度を45-60℃に持つ中度好熱嫌気性細菌による水素発酵は、様々な研究例が報告されている。しかし、至適増殖温度が65℃以上に持つ高度好熱細菌の発酵特性は殆ど研究されていない。これまでの研究から、牛フンに高度好熱細菌が存在している知見を既に得ている。そこで、その細菌の集積培養を試みて、得られた細菌群を人工培地での連続培養系で詳細に検討して、高度好熱細菌群の代謝特性を解明することを目的とした。 牛フンから75℃で嫌気的な連続バッチ培養で集積された高度好細菌群を使用した。グルコース(5g/L)を基質とした人工培地を用いてその細菌群を完全混合槽型のバイオリアクター(培地2L,気相1L)(写真1)で嫌気的に75℃で連続培養した。培地の滞留時間(HRT)を順次2, 1, 0.67, 3日と変化させ、発酵パターンの変化を測定した。その結果、全てのHRTで水素発生が観られ、主要な可溶性代謝産物は酢酸であった。菌体あたりの水素発生量は1.96-4.15L-H_2/g-VSS/dであった。これは、中温菌や中度好熱細菌の一般的な値である0.4-5.0L-H_2/g-VSS/dと比較して同程度である。リアクター体積当りの水素発生量は0.72-1.22L-H_2/L/dであり、一般的な値の3.0-20L-H_2/L/dと比較して低い。これは、集積された高度好熱細菌群の菌体密度が低いことを意味している。HRT 3 dで最大水素収率、3.32mol-H_2/mol-glucoseが得られた。これは、中温菌や中度好熱細菌の一般的な値である0.8-2.5mol-H_2/mol-glucoseと比較して非常に高い。集積された高度好熱細菌群はグルコースから菌体への変化率が低いために、結果としてグルコースから代謝産物への変換率が高まり、高い収率を示すと考えられる。これらの発酵特性は、高度好熱細菌独特の特徴と考えられた。
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