本研究の目的は、乳腺組織において時期特異的に発現するmiRNAを同定し、ターゲット遺伝子群を明らかにすることで、乳腺分化機構の理解を深めることである。本年度の成果として以下に報告する。 1. 昨年度に行ったmiRNAマイクロアレイにより得られた候補miRNAの内、特にmir-101aについて詳細な解析を行った。 2. mir-101a発現は分化誘導時より強制離乳による乳腺退行時に著しく増加する事が明らかとなった。また、mIr-101aの強制発現により、ミルク合成の指標であるカゼイン発現が低下した。 3. mir-101aの強制発現においてSTAT5のリン酸化解析、およびルシフェラーゼ遺伝子の下流にカゼインmRNAの3'UTRを組み込んだベクターを用いたレポーターアッセイの結果、mir-101aはカゼイン発現を直接制御しない事が明らかとなった。 4. 乳腺分化および退行過程に深く関与する細胞増殖について検討をおこなったところmir-101aが細胞増殖を抑制することが明らかとなった。 5. 細胞増殖に関与する因子として知られるcyclooxygenase-2(Cox-2)発現は乳腺退行時に低下することを突き止め、mir-101aの強制発現によりCox-2発現が低下することを確認した。 以上の結果から、mir-101aはCox-2の発現を抑制することで細胞増殖を制御し、乳腺分化および退行過程に重要な役割を担っていることが明らかとなった。
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