研究課題
家畜の初期胚発育において、胚盤胞期以降のゲノムDNAのメチル化反応によるエピジェネティクス制御は、胚盤胞の孵化や伸長発育、各組織への分化、着床に密接に関与していることが考えられる。この時期がウシの妊娠喪失の主要な時期と一致することを考えあわせると、胚盤胞期以降のエピジェネティクス制御が適切に行われることが、受胎のために重要であることが予想される。家畜の飼料中には、メチル化反応に必要なメチル基を供与する因子すなわちメチル基供与体が種々含まれている。これらの物質は家畜による摂取と吸収そして最終的にはDNAのメチル化を介し、生体内のエピジェネティクス機構に直接影響をおよぼすことが考えられる。本研究では、ウシ着床前胚の発生と分化およびエピジェネティクスにおよぼす飼料性メチル基供与体(DMD)の影響を検討することを目的としている。体外受精によって得られた8細胞期胚を、DMDとしてコリンあるいはベタインを添加(それぞれ100μM)した培地中で培養した(無添加区を対照とした)。胚盤胞への発生率、細胞数および内部細胞塊と栄養膜細胞の比率を検討したところ、実験区間に差は見られなかった。得られた胚盤胞について抗メチル化シトシン抗体を用いた免疫蛍光染色を行ったところ、無添加対照区やコリン添加区に比べ、ベタイン添加区における蛍光強度が強い傾向が見られた。一方、孵化後胚盤胞の体外培養条件を改良し、体外受精後18日まで拡張を維持することに成功した。得られた培養系を用いて内部細胞塊から胚盤葉上層への分化マーカーであるビメンチンの発現をモニターしたところ、艀化前後にダイナミックに発現が誘導されることがわかった。現在、ビメンチン等の遺伝子発現におよぼすDMDの効果をエピジェネティクスの観点から検討中である。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Program for the 41st Annual Meeting of the Study for the Study of Reprodution Special Issue(In press)