体細胞由来胚性幹細胞(ntES細胞)に与える加齢の影響を調べるため、2年9カ月齢BCF1オス2匹、2年1力月齢BDF1メス1匹および2年齢BDF1オス2匹の尾から線維芽細胞を採取し核移植を行った。体細胞の直接核移植によるクローン個体作出に成功したのは5個体中1匹のみであったが、ntES細胞は5個体全てから樹立することに成功した。これらのntES細胞は全てES細胞マーカーに陽性であり、キメレラマウスを介して、全てのドナー個体由来の産仔作出に成功した。(次にこれらntES細胞をドナー核として核移植を行った結果、2年9カ月齢という非常に高齢な個体からクローンマウスを作出することに成功した。すなわちドナー個体の状態にかかわらずntES細胞を樹立することで全遺伝子の保存及び子孫作出が可能であり、本技術は不妊動物の増殖方法としても有効な手段であることが示唆された。 しかしながらマウスクローン作出効率は依然として低く、これを向上させることは初期化機構の解明および個体作出技術の発展に大きく貢献すると考えられる。そこで最近開発に成功した新規ライブセルイメージングシステムを用いて、クローン胚初期発生過程で起きている現象を、生者たまま観察し解析することを試みた。具体的にはEGFP-α-tubulinとH2B-mRFP1をコードしたmRNAを未受精卵に注入後、除核、核注入を行ってクローン胚を作出した。核注入後から桑実胚期までの各発生ステージの蛍光画像を10分おきに取得し、画像解析結果を基にクローン胚をグループ分けした後、偽妊娠メスに移植した。その結果、第一分割で染色体の異常分配を起こしていた胚からは個体が得られなかったが、正常なものからはクローン個体を得ることに成功した。長時間蛍光観察をした胚からクローン個体が得られたことから、本システムを用いることで、将来個体になり得るクローン胚を早期に特定することができる可能性がある。
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