スンクスにおける妊娠維持機構を解明するため、まずKAT系統スンクス子宮におけるステロイドホルモンの感受性を検討した。卵巣除去または卵巣+副腎除去を施した個体にそれぞれ、エストロゲンとプロゲステロンを単独または混合投与したところ、これまでスンクス子宮ではエストロゲンに対する反応性が欠如していると報告されてきたが、エストロゲン単独投与により子宮湿重量の増加、BrdU陽性細胞による細胞増殖が確認できた。卵巣除去群と卵巣+副腎除去群に有意な差はみられなかった。また子宮におけるステロイド合成酵素の発現は妊娠子宮において、P450scc、3betaHSD、P450aromいずれも妊娠初期より子宮上皮細胞、子宮腺細胞において弱い発現がみられた。また妊娠子宮におけるエストロゲン受容体(ER-alpha)、プロゲステロン受容体(PR)の局在を免疫組織化学的に解析したところ、ER-alphaは胚の着床が生じると子宮上皮細胞における発現が消失し、PRは胎盤形成に伴い筋細胞にのみ発現し、胎盤における発現はみられなかった。これらのことより、スンクスでは他のほ乳類と同様にエストロゲンとプロゲステロンの作用によって着床が誘起されることが考えられる。また着床前に卵巣除去を施しても妊娠が継続したというこれまでの報告は、スンクスは妊娠初期にプロゲステロンを多量に必要としないため、子宮で産生される少量のプロゲステロンが妊娠を継続させた可能性が示唆された。また着床直後のER-alphaやPR発現が急激に変化したことより、胎盤形成過程におけるエストロゲンやプロゲステロンの役割は一般的な他の哺乳類と異なることが考えられる。
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