機能不明な蛋白質である過塩素酸可溶性蛋白質(PSP)は小胞体ストレス誘導時に核内へすみやかに移行することを明らかにしてきた。また、本蛋白質を培養細胞へ過剰発現させると細胞死が誘導される。PSPの一次構造中に既知のドメインが無いことからPSPによる細胞死誘導機序は不明である。本年度の研究ではPSPのN末端欠損、C末端欠損、さらにN末端C末端欠損させたGFP融合PSP発現ベクターを構築した。それぞれの発現を検討したところ完全長PSPは細胞質に局在するが、N末端を欠失したPSPの多くは核内に存在し、細胞の形態に異常が認められた。C末端を欠失したPSPを発現した細胞に異常は認められなかったが、両端を欠失したPSPでは異常が認められた。これらの結果からN末端から37残基までに核外以降シグナルが存在する可能性、38残基から125残基までに細胞毒性を持つ領域が存在する可能性を明らかにした。 酵母two hybrid screeningを行い肝臓cDNA library中にPSPと結合する分子の同定を試みた。結果、PSP完全長をbaitに用いた場合、得られる遺伝子はPSPのみであった。N末端を欠損したPSPを導入した酵母は生育不能であった。C末端を欠損したPSPを用いた場合に7種の遺伝子が得られた。その内、2つは機能未同定の遺伝子である。得られ遺伝子のーつであるhypoxathine phoshoribosyl trasferase(HPRT)がPSRと相互作用するか免疫沈降法、GST-pull down法、HPRT活性に及ぼすPSPの影響を検討した。PSPとHPRTは直接結合することが示唆されたが、PSPはHPRTの活性に影響を及ぼさなかった。
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