デコリン産生をノックダウンした間葉系幹細胞株(DK;Decorin Knockdown cell)を作成し、運動器、すなわち、骨および軟骨(今年度は主に骨の解析)に誘導した際の細胞学的、組織学的変化を検索した。DKの産生抑制はmRNA及びタンパクの両レベルで確認した。 DKは対照細胞と比較して増殖速度が遅かった。また、骨細胞に分化誘導した場合、誘導開始後急激に上昇が認められるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性が低い値のままであった。骨分化誘導21日目以降に対照の細胞にはカルシウム沈着を認めたが、DKでは細胞内に脂肪滴が認められ、脂肪細胞への分化が起きていた。mRNA量を検索してみると、骨分化誘導を行った対照細胞のデコリンの発現は非誘導群と比較して有意に高い値を示したが、DKのデコリンmRNA発現レベルは低い傾向であった。 骨細胞分化誘導培地にデコリンを加えてDKを培養しても、増殖速度およびALP活性の回復は認められなかった。 以上のことから、デコリンは間葉系幹細胞が分化する過程で細胞の分化の方向性を決定する主要な因子であることが示唆された。今後、どの段階でデコリンが機能しているのかを解明していく必要がある。
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