本年度は、新規生理活性ペプチド、ニューロメジンSならびにその同族と考えられるニューロメジンUがどのような生理作用を持つのかを明らかにすることを目的にし、特にノックアウトマウスを用いて研究を行った。 ニューロメジンSをラット脳室内に投与すると強力な摂食行動の抑制、さらに概日リズムに対して投与時刻依存的に位相の前進、後退をひきおこすことがこれまでの研究でわかったので、まず、ニューロメジンSノックアウトマウスにおいて糖・脂質代謝、概日リズムへの影響を検討した。その結果、軽度の肥満、糖代謝異常、UCP1やPPARαなどの糖・脂質代謝関連遺伝子に変化が見られた。また、赤外線センサーによる行動量の観察によって概日リズムを測定したところ、ニューロメジンSノックアウトマウスでは恒常暗下に置いて完全にリズムが消失した。しかし129SV/Pae系統のES細胞を用いて作成したノックアウトマウスだったのでC57BL/6Jマウスとのバッタクロスを進めていくとこれらの異常は全て見られなくなった。現在、これらの異常がニューロメジンSに由来するものなのか、129SV/Pae系統の影響なのか、慎重に検討している段階である。ニューロメジンSはニューロメジンUと同じ受容体に作用するのでバッククロスの各段階でニューロメジンUの発現が変わりニューロメジンS欠乏の代償作用が生じている可能性があるとも考えられる。現在、ニューロメジンSとニューロメジンUのダブルノックアウトマウスを作成し、解析を始めている。もしダブルノックアウトマウスに野生型とは異なる表現系が現れたら、ニューロメジンS、ニューロメジンUどちらに起因する作用なのかを、それぞれのノックアウトマウス用いたり、Cre/loxPシステムなどを用い、より詳細に検討したいと考えている。
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