C型肝炎ウイルス(HCV)は、日本脳炎ウイルス(JEV)と同様、フラビウイルス科に属するウイルスである。JEVとの類似性を検討するため、HCVのコア蛋白質のプロセッシングについて検討を行った。HCVのコア蛋白質は、前駆蛋白質からシグナルペプチダーゼによって切り出された後、シグナルペプチドペプチダーゼ(SPP)によってそのC末端領域が切断されて成熟する。しかしながらヒト由来細胞内でのSPPによる正確な切断部位は明らかとなっていない。また、コア蛋白質の界面活性剤耐性膜画分(DRM)への局在とウイルス粒子形成におけるSPPによる切断の関係も未だ明らかにされていない。本研究では、ヒト株化細胞でのSPPによる切断部位を同定するとともに、コア蛋白質の細胞内局在とウイルス増殖におけるSPPによる切断の生物学的意義を解析した。 成熟型コア蛋白質のC末端はPhe177であり、さらに、Ile176とPhe177に変異を導入したコア蛋白質がSPP切断に耐性であることからも、ヒト由来細胞でのSPPによるコア蛋白質の切断部位はPhe177/Leu178であることが支持された。成熟型コア蛋白質はDRMにも検出されたが、SPPに耐性を示す変異コア蛋白質はDRMには検出されなかった。また、SPP阻害剤処理やSPPドミナントネガティブ体の発現により、コア蛋白質の切断が阻害されDRMへの局在も消失した。さらにJFH-1株感染細胞をSPP阻害剤で処理すると、細胞内ウイルスのRNA量に比べて、培養上清へ放出されるウイルスRNA量の顕著な減少が認められた。これらの結果から、SPPによるHCVコア蛋白質のプロセッシングは、コア蛋白質のDRMへの局在に重要な役割を演じており、ウイルス粒子の集合にも関与している可能性が示唆された。
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