以前我々の研究室で酵母発現系を用いて確立された「ヘテロ型5量体組換えワクチン」技術の汎用性を高めるため、今回本技術を大腸菌発現系へ応用することを計画した。H19年度は大腸菌発現系においてヘテロ5量体分子の基本骨格となるペリプラズム蓄積型及び細胞質蓄積型分子を構築した。具体的には5量体形成効率検討の基盤となるCTB融合用分子:1)C末端、2)N末端、3)N、C両末端融合型、及び4)非融合CTB分子(分子バッファー)を構築した。その過程で得られた新たな知見として、コレラ菌本来のCTBリーダー配列を大腸菌由来のpelB配列と置換することで、CTB5量体分子が生物活性を保持した状態で効率よく大腸菌から分泌発現することが分かった。これはCTB本来のリーダー配列を用いた場合には認められない現象であり、しかも、通常のLB培地の使用で大腸菌から5量体の形態で分泌発現が確認されたことは以前報告がない。また、これまで酵母や植物などの小胞体をもつ真核生物やCTBの本来の発現宿主であるコレラ菌を除けば、5量体として優位に分泌発現が確認された例はなく、しかも酵母などの真核生物では、CTB本来のリーダーでもCTBの分泌シグナルとして機能する点において大腸菌とは分泌に関し発現様相が全く異なることが分かった。更に、枯草菌発現系などのペリプラズムを持たないグラム陽性菌の発現系では、単量体優位にしか分泌発現が達成されていないのが現状であり、今回得られた知見は、今後のCTB関連組換え融合蛋白質を生物活性を保持した状態で確保するという観点から重要であると考えている。H20年度は上述の各種融合用蛋白質にインスリン関連分子をホモ型、ヘテロ型分子として融合させ、その発現様相に与える影響の解析と生体防御分子としての機能解析を進める。
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