現在まで、マウスの小腸における腸上皮細胞間リンパ球(IEL)分布の部位差について調べてきたが今回、盲腸、大腸を含めたIEL分布の部位差について検討した。従来、大腸IELはαβT細胞が主であると報告されてきたが、本研究の結果、大腸IELにも多くのγδT細胞が含まれており、その割合は小腸の下部よりも高いことが明らかとなった。小腸に分布するγδT細胞の大部分は腸管に特異的なCD8 α α^+ subsetであるのに対し、大腸のγδT細胞のほとんどが、末梢で見られるのと同じdouble negative subsetであること、大腸のαβT細胞においては腸管特異的なCD8 α α^+ subset、CD4^+CD8α α^+ subsetがほとんど見られないこと等、小腸と大腸のIELには分布に大きな違いがあり、機能にも大きな違いがあることが推測された。本年度は3ケ月齢、6ケ月齢、12ケ月齢マウスにおけるIELの部位差を調べたが、IEL subset分布の傾向はほとんど変化がなかった。しかし、12ケ月齢マウスにおいてはIEL数が減少傾向にあり、腸管免疫系の老化による変化である可能性が考えられた。今後調べる予定の18ケ月齢、24ケ月齢、30ケ月齢マウスにおいて、さらに検討を進めたいと考えている。 ラットの小腸、大腸IELは、マウスのIELと比較して、αβT細胞が大部分を占め、γδT細胞が非常に少ない、NK細胞、NKT細胞の割合が非常に高い等の違いが認められた。しかし、小腸上部でγδT細胞の割合が比較的高く、小腸下部で低い等の基本的な分布の傾向はマウスと同様に認められた本年度、ラットIELの部位差の傾向はつかめたものの、現在、大腸から分離される細胞の約半数が非T細胞、非B細胞、非NK細胞の形質を示しており、分離手法の問題によるコンタミネーションの所性も含め、引き続き検討していきたいと考えている。
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