研究概要 |
3年間にわたり、マウスの小腸、大腸に分布する腸上皮細胞間リンパ球(IEL)分布の加齢性変化について調べてきた。その結果、IEL数は6ヶ月齢をピークに減少すること、小腸上部、中部、下部、盲腸、結腸に分布するIELのsubset構成は、若齢(3ヶ月齢)マウスから老齢(24ヶ月齢)マウスまでほぼ同様の傾向を示すことが明らかとなった。また、小腸の部位間、盲腸と結腸の間でもIEL subset構成に若干の違いは見られるが、小腸と大腸に分布するIEL subset構成の違い特に顕著であり、小腸IELと大腸IELの分布は連続的なものではないと考えられた。 また、昨年度行ったマウスの小腸パイエル板の部位差について、DNAマイクロアレイ結果の解析をさらに進めたところ、発現に部位差が見られた遺伝子の中で免疫系に関連した遺伝子は、histocompatibility 2, q region locus 1 (H2-Q1)、interleukin-18 (Il18)、adenosine disaminase (Ada)、angiogenin, ribonuclease A family, member 4 (Ang4)、chemokine (c-c motif) ligand 6 (Ccl6)、histocompatibility 2, T region locus 22 (H2-T22)の6遺伝子であったが、免疫機能や活性化状態に関する一定の傾向は認められなかった。このことから、マウスのバイエル板は平常状態ではその免疫機能や活性化状態に、部位による差はほとんどないと考えられた。これらの知見は、腸管感染症や自己免疫疾患等の非平常状態におけるパイエル板の局所応答と病態形成の関係を調べる上で、不可欠かつ重要な知見であると考えられる。
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