研究概要 |
本年度は、昨年度作製したラット-犬キメラ抗体発現系を用いて、哺乳類細胞株へ遺伝子導入後、その発現を確認した。キメラ抗体構築に用いたイヌ免疫グロブリンは、重鎖についてはA〜Cの3タイプ、軽鎖についてはκおよびλの2タイプで、それぞれの組み合わせによりAκ, Aλ, Bκ, Bλ, Cκ, Cλの6種についてキメラ抗体を作製した。ヒト腎臓由来293T細胞に昨年度作製したベクターを遺伝子導入し、2日後の細胞培養上清を回収した。培養上清をProteinA/Gセファロースと1晩インキュベートすることにより、上清の濃縮をはかり、HRP標識抗犬IgG抗体を用いてウエスタンブロッティングを行った。また、同時に導入ベクターのマルチクローニングサイトに特異的なプライマーを設定し、RT-PCRを行うことにより、それぞれの導入した遺伝子が発現していることを確認した。上清中の蛋白の発現は、BκおよびBλの2つの組み合わせにおいてのみ認められ、それ以外の4つの組み合わせについては発現が認められなかった。その理由として、検出抗体の認識部位の差異により検出できていない可能性、産生された抗体の安定性または発現量の問題などが考えられるが、それらについては現在検討中である。一方、BκおよびBλについては、蛋白の発現が確認されたため、それらを大量培養しそのキメラ抗体としての機能の検討をより詳細に検討することにより、犬における抗体療法の実施が可能となる。
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