研究概要 |
発情休止期早期に頻発するイヌ子宮蓄膿症の発生機構を解明するため,本研究七は子宮内における自然免疫反応の変化に着目し,本年度はまず細菌に対する感染防御因子として近年注目されているToll-likeレセプター(TLR)4および2とそれに誘導されるサイトカインの一つであるインターロイキン8(IL-8)の発情周期中および子宮蓄膿症に罹患したイヌの子宮内における発現を調べた。 TLR4にういで,半定量的RT-PCR法で測定した禰NA発現は,発情周期中および子宮蓄膿症罹患犬め子宮で発現していることが確認され√その発現量は発情休止期中期で有意に高いが,=他の時期では有意な差がないごとがわかった。-方,免疫組織染色およびwestern blottingにおいてもTLR4蛋白質の発現が確認されたが,発情休止期早期では免疫組織染色で反応性がほとんどなく,western blottingにおいても発現が低下している傾向がみられた。TLR2について,半定量的RT-PCR法で測定したmRNA発現は,TLR4と同様に全群で発現が確認されたが,その発現量は発情周期中では低く子宮蓄膿症で大きく増加していることがわかった。IL-8 mRNAは,発情周期中ではほとんど発現が見られず,子宮蓄膿症罹患犬で発現が増加す咎ことがわかった。これより,発情休止斯早期にTLR4蛋白質の発現が減少することにより子宮内の感染防御反応が低下し,イヌ子宮蓄膿症の発生に関与する可能性が考えられた.また細菌感染によりTLR2が活性化し,サイトカインを産生して細菌の排除に働いている可能性が考えられた.本研究によりイヌ子宮におけるTLRの発現が初めて確認され,子宮蓄膿症発生ンヽの関与の可能性が示されたことは,本症やその他の子宮内感染症の予防および治療法の開発に対して,有意義な知見となり得る.
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