酪農経営に甚大な被害を与える乳房炎の治療は、抗生物質中心であるが、その多用による薬剤耐性菌の出現が危惧されている。生体の生理活性物質であるサイトカインを利用した乳房炎治療技術の確立は、この薬剤耐性菌の問題を解決できる可能性がある。本試験において乳房炎罹患分房内にウシサイトカインGM-CSF、IL-8を単独および併用投与したところ、全群で乳房炎治療効果が示され、特にGM-CSFにおいて顕著だった。全群で乳汁中貪食細胞機能が亢進したことから、自然免疫系を介した治療効果であることが示唆され、さらにGM-CSFではT細胞系の機能亢進も誘導したことから獲得免疫系も含めた効果と考えられた。
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