研究概要 |
本研究は泥炭中に生息する還元的酢酸生成細菌を検出することを目的とした。本年度は還元的酢酸生成細菌が保有する炭酸固定経路(CO dehydrogenase/Acetyl-CoA pathway)を担う主要酵素群のうち、formyl tetrahydrofolate synthetase(fhs遺伝子)を用いることにより、機能遺伝子特異的な多様性解析を行った。試料は山形県月山弥陀ヶ原湿原に点在する池塘の水底部の泥炭を使用した。ビーズ破砕法によりゲノムDNAを抽出した後、これを鋳型としてTouch down PCRによりfhs遺伝子約1100bpの増幅を行った。増幅後、当該遺伝子のクローニング、塩基配列の決定、相同性検索、アミノ酸ベースの分子系統解析を行った,その結果、メタン発酵リアクターやダチョウのルーメン内に見いだされる当該遺伝子クローンに近縁なクローンが多く見いだされた。これらの結果から、月山湿原泥炭中には未だ培養されていない新規の還元的酢酸生成細菌が生息していることが強く示唆された。本研究の結果は、泥炭が未培養の還元的酢酸生成細菌の有望な分離源であることを示したものであり、当該細菌の網羅的な分離培養を行う上で有用な知見を提供できるという点で、大きな意義があるものと考えられた。
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