研究概要 |
農耕地では,微生物分解により農薬補助剤非イオン系界面活性剤アルキルフェノールポリエトキシレート(APEO)から外因性内分泌撹乱物質アルキルフェノール(AP)類が生成されている.よって現在,農耕地を起源とする水循環系および農作物の安全性を確保する上で,環境負荷の少ない微生物機能を利用した残留性AP類の無毒化技術の開発が期待されている.しかし,微生物によるAPEOの分解機構の詳細は解明されていない.そこで本研究では,既に分離されたAPEOの一種オクチルフェノールポリエトキシレート(OPEO)不完全分解菌Pseudomonas putida S-5のOPEO分解酵素遺伝子をトランスポゾン(Tn)タギング法で単離し,その遺伝子産物の機能と構造を明らかにしてOPEO生分解機構を解明することを目的とする.これまでの研究で,P.putida S-5から作成した約11,000株のTn挿入変異株を選択培地(OPEO培地)で培養し,OPEO培地での生長が著しく低下した変異株すなわちOPEO分解遺伝子破壊株21株を選択した.そこで,19年度において,それら21株より6株を選択し,それらの遺伝子の塩基配列と発現を解析した.はじめに,6株の染色体DNAから取得したTn挿入部位周辺のDNA断片を用いて,Tn挿入で破壊された6遺伝子の塩基配列を決定した.相同性検索により,それらがアミノ酸トランスポーター,NADHキノン酸化還元酵素等と相同性を示すことを見出した.また,6つのOPEO分解遺伝子の発現解析を,OPEOまたはグルコースを炭素源とした培地で培養したP.putida S-5の全RNAを用いたRT-PCRにより行った.その結果,6遺伝子において,1つの遺伝子がOPEOにより誘導され,残り5つは構成的に発現されることを明らかにした.
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