研究概要 |
テクネチウム-99(^<99>Tc)を好気的条件下で菌体内に蓄積する好塩細菌(Halomonas sp.Tc-202株)の蓄積に関わる遺伝子を特定するために,発現クローニングおよびトランスポゾン導入変異体作製を行なった。 Tc-202株のゲノムDNAを用いた発現クローニングでは,抗生物質と^<99>Tcを塗布した平板培地で形質転換体を培養後に菌体をろ紙に写し取り,ろ紙上の^<99>Tcの放射能をイメージングアナライザーで解析した。この結果,Tc-202株と同等の^<99>Tc蓄積能を示すコロニーを得ることができたが,形質転換体の単離には至らなかった。 トランスポゾン導入による変異体作製では,Tc-202株のエレクトロコンピテントセルを作製することが困難であったためエレクトロポーレーション法で変異体を得ることはできなかった。そこで,トランスポゾンと薬剤耐性遺伝子を含むプラスミドで形質転換した大腸菌とTc-202株を共培養することにより Tc-202株にトランスポゾンを導入することができた。当初,得られた変異Tc-202株の^<99>Tc蓄積能を平板培地上で行なっていたが,蓄積能の欠損株の特定ができなかった。そのため,得られた変異体を単離し,^<99>Tc添加液体培地で培養後の培地中の^<99>Tc量を液体シンチレーションカウンターで調べた。これまでのところ^<99>Tc蓄積能を欠損した変異体は得られていない。より多くの検体を処理するためには変異株の^<99>Tc蓄積能の有無を確かめるアッセイ方法に改良の余地がある。 今回の実験で使用している^<99>Tcの化学形態が^<99>Tc0_4-であることから,Tc-202株の^<99>Tc菌体移行がSO_4^<2->イオンの輸送機構によるのではないかと,BROOKHEAVEN National LaboratoryのA.J.Francis博士から指摘を受けた。そこでTc-202株の^<99>Tc蓄積へのSO_4^<2->イオンの影響を調べたところ,終濃度50mMまでのSO_4^<2->イオンはTc-202株の^<99>Tc蓄積に影響を与えないことが分かった。このことから本菌の^<99>Tc蓄積機構はこれまでに推定されている経路とは異なることが示唆された。
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