研究概要 |
好気的条件下でテクネチウム-99(Tc-99)を菌体内に蓄積する好塩細菌(Halomonas sp. Tc-202株)の蓄積に関わる遺伝子を特定するため,発現クローニングおよびトランスポゾン導入による変異体の作製を行った. 発現クローニングでは,Tc-99を塗布した平板培地上に形質転換体を単離培養し,37℃で24時間培養後にコロニーの放射活性をイメージングアナライザーで解析した.Tc-202株と同様の蓄積能を示すコロニーについてインサート配列を解析するとともに,液体培養によるTc-99蓄積能を調べた.インサートには他種のバクテリア由来のレダクターゼや酸化還元酵素と類似性を示す塩基配列が確認されたが遺伝子の全長は得られなかった.平板培地でスクリーニングした変異体は,液体培養条件下でもTc-202株の約3割程度Tcの-99を培地中から回収した. トランスポゾン導入実験に供するTc-202株に抗生物質耐性能を持たせるべく,抗生物質リファマイシン濃度を除々に上昇させた培地を用いてTc-202株を継代培養し,終濃度20ug/mLのリファマイシン下でも良好に生育する変異株Tc-202Rif+株を得た.この変異株に対してトランスポゾンを導入させ,2種の抗生物質を含む培地を用いTc-202Rif+株の最適培養温度(15℃)で培養し,トランスポゾンが導入されたTc-202Rif+株のみを生育させた.この変異株を単離し液体培養条件下でTc-99蓄積能を調べたところ,複数の変異株においてTc-99蓄積能が低下していることが確認されたが,完全にTc-99蓄積能を失う変異株は得られなかった. 以上の結果からTc-202株のTc-99蓄積には単独のタンパク質ではなく,複数の酵素やタンパク質が相互作用し,Tc-99を培地中から菌体内へ取り込み還元しているものと考えられた.
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