研究概要 |
オーキシン活性を示す2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)は70年以上にわたって除草剤として広く用いられているが、その分子機構は未だに明らかになっていない。申請者は、以前、シロイヌナズナを用いた化学的・遺伝学的研究により、2,4-D抵抗性に関わる新規のタンパク質SMAPを同定した。さらに、2,4-Dがアクチンを破壊し、その結果として細胞骨格構造が変化することを見出した。この効果は2,4-Dに特異的であり、内生オーキシン・インドール-3-酢酸には見られないことも明らかにした。 平成19年度は、2,4-Dで誘導されるアクチン分解におけるSMAPの役割を理解することに集中して研究を行った。材料としてSMAPのRNAiラインとSMAP変異体であるaarlを用い、免疫染色と生細胞を用いたイメージング手法を用いて研究を行った。その結果、SMAP発現を無くしてしまうと、2,4-Dがアクチンを分解できなくなることが判明した。これは、SMAPが2,4-D経路における正の制御因子として働いていることを示している。さらに、SMAPがアクチンの状態を制御するアクチン関連コファクターを介して機能している証拠を得た。 さらに、オーキシンとエチレンの信号伝達に関する機械的ストレスの影響を調べた。その結果、機械的ストレスを増大させるとエチレンに対する応答が増幅され、その結果、根の形態が変わることを見出した。さらに、オーキシンとエチレンに対する応答が増幅するのは、主に、エチレン合成ではなくエチレン信号伝達系によって制御されていることを明らかにした。それらの結果はPlant Physiology誌に発表され、掲載号の主要論文の一つに取り上げられた。
|