研究概要 |
2, 4-ジクロロフェノキシ酢酸(2, 4-D)は、植物ホルモン・オーキシンであるインドール-3-酢酸(IAA)の類似化合物で、選択的除草剤として数十年間の使用歴がある。世界での使用量は3番目に高いが、選択性除草剤としての活性毒性機構は明らかになっていない。申請者は、シロイヌナズナにおける2, 4-D特異的抵抗性が新規タンパク質SMAP1によるものであることを示したが、SMAP1の機能は不明で、オーキシン経路への関与も示されていなかった(Rahmanら, 2006)。また、2, 4-Dはアクチン細胞骨格を分解するが、IAAはその作用を持たないことも示した(Rahmanら, 2007)。しかし、SMAP1とアクチンの関係は明らかにされていない。本プロジェクトは、(1) 細胞骨格組織における2, 4-Dで誘導される変化の分子機構およびその細胞分裂制御における関係、および、(2) 2, 4-Dの選択的除草剤としての双子葉および単子葉植物への影響の分子機構の解明を目的とした。研究期間中、2, 4-Dに仲介されたアクチンの分解過程におけるSMAPの役割の解明は大きな進展を遂げた。申請者の研究結果は、SMAPを欠損させると細胞は2, 4-D誘導アクチン分解に耐性を持つことを示している。このことから、SMAP1が2, 4-D誘導アクチン分解に正の調整因子として作用していること、また、アクチン調整因子であることが示唆される。現在、イーストのツーハイブリッド法を用いて、SMAP1と関与する分子の特定を進めている。また、定量的PCRを用いて、代表的な単子葉植物と双子葉植物におけるSMAP1の発現パターンを比較した。その結果は、SMAP1の発現が単子葉では制限されていること、そしてSMAP1が双子葉特異的なタンパク質であり細胞のアポトーシス機構を制御する要素であることを示している。
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