家畜動物や愛玩動物は、その産業性質から雌雄どちらかの個体が必要とされることが多い。しかし、産仔の段階で雌雄の選別を行うことはコスト的にも倫理的にも不適切であるため、配偶子の段階、あるいは発生のごく初期、特に胚移植可能な着床前初期胚以前の段階での雌雄選別が望まれる。申請者はこれまでに哺乳動物初期胚を用いた蛍光ライブセルイメージングの系を構築した。本実験系は、特定タンパク質と蛍光タンパク質との融合タンパク質をコードしたmRNAをin vitroで合成し、これを卵子内に顕微注入することによって蛍光分子を発現させ、顕微鏡でその動態について胚を生かしたまま追跡するという手法である。本技術では、蛍光観察後に胚を偽妊娠マウスへと移植すれば産仔が得られることから、胚選別技術としての応用が考えられた。そこで、申請者はこのシステムを発展させ、性染色体を認識する蛍光プローブを開発することで新規雌雄初期胚選別技術に応用することを目的とする。本年度は、発生に全く影響のないイメージング技術を確立するため、蛍光観察後に胚を移植し、問題なく産仔が得られるような蛍光観察の条件を詳細に検討した。その結果、1細胞期から胚盤胞期にかけての約70時間にわたり、計6万枚の蛍光画像を取得した後も問題なく胚が個体発生することがわかった。その他、胚選別を行うには同時に多くの胚を詳細に観察する必要が生じるため、100個以上の胚を同時にイメージングできるような機器の改良を行った。
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