家畜動物や愛玩動物は、その産業性質から雌雄どちらかの個体が必要とされることが多い。しかし、産仔の段階で雌雄の選別を行うこことはコスト的にも倫理的にも不適切であるため、配偶子の段階、あるいは発生のごく初期、特に胚移植可能な着床前初期胚以前の段階での雌雄選別が望まれる。申請者はこれまでに哺乳動物初期胚を用いた蛍光ライブセルイメージングの系を構築した。本実験系は、特定タンパク質と蛍光タンパク質との融合タンパク賃をコードしたmRNAをin vitroで合成し、これを卵子内に顕微注入することによって蛍光分子を発現させ、顕微鏡でその動態について胚を生かしたまま追跡するという手法である。本技術では、蛍光観察後に胚を偽妊娠マウスヘと移植すれば産仔が得られることから、胚選別技術としての応用が考えられた。そこで、申請者はこのシステムを発展させ、性染色体を認識する蛍光プローブを開発することで新規雌雄初期胚選別技術に応用することを目的とした。本年度は、雌胚特異的に見られるX染色体不活性化現象をリポートする蛍光プローブを開発し、実際に雌雄胚選別を試みた。このプローブをコードするmRNAをインジェクション後、受精後4日目の胚盤胞期胚で蛍光観察したところ、約半数の胚において核内に明確な不活性化X染色体のシグナルが観察された。実際にこれらの胚を仮親に移植してみると、100%の確率で雌が生まれ、残りの胚からは雄胚のみが生まれた。この実験系における産仔作出効率は無操作のコントロールと遜色ないことから、マウス胚において雌雄の100%の産み分けに成功したと言える。
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