研究概要 |
本年度は、研究の第1の目的である「汎用性の高い新しいKdo受容体の設計と合成」を行った。その結果、研究計画1-a),b)の目標を達成した。 1-a)マンノースC6から炭素伸長によるKdoの合成: マンノフラノースの5,6環状硫酸エステルに対してジチアン誘導体を位置選択的に付加させることによって8炭素骨格を構築した。続いて、フラノース環から還元反応を経てピラノース環への再環化を行ったのちに保護基を除去し、Kdo の合成をマンノースから7段階、全収率33%で達成した。 1-b)マンノースC1から炭素伸長によるKdoの合成 糖鎖合成に利用可能な保護基を2,3位および5,6位に導入したマンノースのC1から、Wittig反応を利用して増炭し、得られた不飽和エステルを酸化したのち、環化することにより4,5位および7,8位が異なる保護基であるKdo受容体を合成する経路を確立した。 今回の研究で得られた Kdo誘導体は、本研究の目的であるグラム陰性菌が産生する複合糖脂質の酸性内部コア糖鎖合成において、還元末端側の糖受容体および供与体へ任意に変換が期待できる重要な鍵化合物である。目的となる内部コア糖鎖合成のベースポイントができた点に大きな意義がある。また、本合成方法は共に数グラム単位での合成が可能であり、今後の内部コア糖鎖のうちKdo2糖からなる(Kdo(α2-4)Kdoの合成における反応条件検索において原料供給体制が確立できた点でも重要である。
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