エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは糖タンパク質に位置とアノマーを変えることなく自由に糖鎖を付加できる能力を持つ酵素である。しかし、糖転移物が加水分解され収率が10%程度になるため、適切な時間で反応を止める必要があり、糖鎖研究への利用は限定的なものであった。このような反応条件設定の難しさを克服するため、既にオキサゾリン中間体を基質とした効率的な糖鎖付加手法の開発に成功している。しかし、オキサゾリン基質の合成とその安定性の低さが糖転移物の効率的な合成を行う上での障害となっていた。そこで、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ-A(Endo-A)に部位特異的変異導入を行い、オキサゾリン基質を使わずに高い糖転移効率でペプチドやタンパク質に高マンノース型糖鎖を付加させる手法の開発を目的とした。今回、Endo-AのN171G変異酵素を用いることで、本酵素の糖鎖転移活性を10倍高めることに成功した(学会発表1)。また、本変異酵素を利用することにより、糖ペプチド及び糖タンパク質への糖鎖の導入効率を高めることができ、糖タンパク質の糖鎖を自由にデザインすることが可能になった(学会発表1)。糖鎖を自由にデザインすることは糖鎖研究に残された重要で難しい課題である。本変異酵素をさらに改良することにより、効率的で安価な糖タンパク質糖鎖の構築法の開発を行い、動物細胞を使わない糖タンパク質製剤の開発など、医療分野に貢献することが期待される。
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