全タンパク質を網羅的に研究する方法として、プロテオミクス解析が行われている。プロテオミクスは、細胞でつくられる全タンパク質を明らかにし、大規模に解析することで、遺伝子の発現や変動をタンパク質レベルで解析し、細胞内のタンパク質の機能的関連性を網羅的に解析する手法である。本研究ではあらかじめゲノム遺伝子やcDNAを取得した上でタンパク質の網羅的解析を行うリバースプロテオミクスの手法を用いて分裂酵母におけるヒストンの翻訳後修飾に関わる因子の同定を試みた。本年度は独立行政法人理化学研究所吉田化学遺伝学研究室で作製された分裂酵母の全遺伝子の一つ一つの過剰発現が可能なコレクションから細胞抽出液を調製し、メンブレンにスポットすることで作製したリバースアレイを用いて検討を行った。ヒストンの翻訳後修飾の検討は、ヒストンH4の5番目のリジン残基(H4K5)のアセチル化、ヒストンH3の9番目のリジン残基(H3K9)のアセチル化を特異的に認識する抗体を用いて行なった。その結果、H3K9のアセチル化レベルがヒストン脱アセチル化酵素Sir2の過剰発現により減少し、ヒストンシャペロンCia1の過剰発現によって増加することが観察された。さらにこれらの増減はWestern blottingで確認されたことからこの方法の有効性が示された。本方法を用いた検討によってヒストンの各アミノ酸残基における翻訳後修飾に関与する因子が同定されると期待される。
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