本研究では、あらかじめゲノム遺伝子やcDNAを取得した上でタンパク質の網羅的解析を行うリバースプロテオミクスの手法を用いて、分裂酵母におけるヒストンの翻訳後修飾に関わる因子の同定を試みている。特定の遺伝子の過剰発現により、その遺伝子産物の下流で機能しているタンパク質の翻訳後修飾に変化が生じることが期待される。そこで、本研究では分裂酵母の全ORFの過剰発現株を利用し、ヒストンの翻訳後修飾に及ぼす遺伝子過剰発現の影響を調べることで、細胞内クンパク質ならびに翻訳後修飾のネットワークを明らかにすることを目指す。 本年度は、前年度に作製した全細胞抽出液をニトロセルロース膜にスポットすることでリバースアレイを完成させた。そのリバースアレイに対して、ヒストンH3のLys9、Lys14、Lys18、Lys23、Lys56のアセチル化、Lys4のジメチル化、Lys4のトリメチル化、Ser10のリン酸化、ヒストンH4のLys5、Lys8、Lys12のアセチル化を特異的に認識する抗体を作用させて検討を行った。さらに、ヒストンの翻訳後修飾に対してリバースアレイで得られた陽性因子のSDS-PAGE/Western Blottingによる確認を行った。その結果、ヒストンのアセチル化をグローバルレベルで変動させる因子として、アセチル化酵素、脱アセチル化酵素に加えてヒストンシャペロンやクロマチン構造に影響を及ぼす因子、さらにはrRNAの転写活性化因子やアミノ酸、グルコース代謝に関与する因子などが修飾状態を変動させる因子として明らかにされた。
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