研究概要 |
有機金属試薬の持つ反応選択性(官能基選択性や位置・立体選択性など) の制御は効率的な有機合成反応を考える上で最も大事な要素の一つです。しかし、反応選択性が生じる起源(相互作用) の詳細には不明な点が多く残されています。従って、この多核金属試薬の持つ反応性の違いの起源を明らかにできれば、あらゆる副反応を抑えて望みの反応選択性だけを示す試薬の設計・開発が可能になると期待できます。こうした考えのもとに本研究課題において私は、理論化学計算および実験化学的手法を用いて「金属アート型塩基の持つ反応選択性の起源の解明と機能性芳香族構築化学への展開」を行っています。 平成20年度は、アルミニウムアート型塩基・反応中間体の構造と反応メカニズムについて、NMR等のスペクトル手法を組み合わせて用いた検討を行いました。その結果、類似の亜鉛試薬であるTMP-zincateとの反応選択性の類似点・相違点についてその詳細を明らかにすることができました(J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 16193-16200.) 。この過程でアルミニウムアート型塩基のアルミニウムが配位飽和になっていることが高い反応選択性を発現する要因どなっていることを明らかにしました。同時に、有機強塩基が意外にもアート型塩基と同様に高い官能基共存性を示しつつ、環生成を伴いながら触媒的な機能性芳香族の構築を可能とすること(Adv. Synth. Catal. 2008, 350, 1901-1906.) 、アート型塩基と有機強塩基のコンセプトを同時利用することで全く異なる触媒反応の開発が可能となること(Chem. Eur. J. 2008, 14, 5267-5274.) を明らかにしました。
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