研究概要 |
原子効率100%の触媒的不斉4置換炭素構築反応の開発を目指し、アリルシアニドを低立体障害性炭素求核剤として設定し、ソフト金属、ハード塩基の協同触媒系を構築して反応の検討を行った。Cu/Ph-BPEILiOAr触媒系がアリルシアニドの脱プロトン化による求核的活性化に極めて有効であることを見いだし、世界で初めてのプロトン移動のみによるケトイミンへの不斉付加反応の開発に至った(JACS 2008, 130, 14477)。本触媒系をさらに精査・し、ケトンへのプロトン移動条件下での不斉付加も良好に進行することを見いだした(JACS2009, 131, 3195)。ケトイミン、ケトンへの付加反応において、アリルシアニドはそれぞれ完全なα-付加反応、γ-付加反応を起こし、アリルシアニドのアンビデント炭素求核剤としての利用価値も合わせて明らかにした。希土類金属/アミドリガンド触媒系においては、前年度に開発した触媒的不斉アミノ化反応におけるLa(O^iPr)_3から調製する第一世代触媒の高コスト、低再現性を払拭する、La(NO_3)_3/amineからなる第二世代触媒を創製し、糖尿病合併症治療薬の有望な治療薬として臨床第3相試験中であるAS-3201の効率的触媒的不斉合成に多大な貢献をした(OL2008, 10, 2725)。希土類金属アミドリガンド触媒系は、ダイナミックな動的平衡状態にあることから、従来の1触媒-1構造-1機能型触媒から脱却する、I-触媒-多構造-多機能型触媒への展開を試みた。構造的にフレキシブルなアミドリガンド、配位数、配位形式に多様性を持つ希土類金属の特性を最大限に引き出し、反応系中でダイナミックな構造変化、機能変化を起こす触媒の創製に成功し、4置換炭素型触媒的不斉Mamich型反応において、反応途中で触媒構造を変化させ、立体選択性を逆転させる事に成功した(JACS 2009, 131, 3779)。
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