ケモカイン受容体CXCR4は、HIV感染、種々の固形癌の転移や血液癌の進行、慢性関節リウマチの炎症等に大きく関わっていることが明らかにされつつあり、T140誘導体をはじめとしたCXCR4特異的アンタゴニストが疾病治療薬のリード化合物として精力的に開発されている。本研究では、これまでに用いられている放射性同位体(RI)標識プローブにかわる新たなアンタゴニストスクリーニング用プローブとして、CXCR4特異的に結合する蛍光性アンタゴニストの開発を行なう。本年度は、申請者らが前年度に開発に成功した蛍光性T140誘導体を用い、細胞膜表面のCXCR4をイメージングするための蛍光プローブとしての機能評価を行った。細胞はC末端側にGreen Fluorescent protein(GFP)を融合したCXCR4を恒常的に発現するNP2細胞株を用い、Tetramethylrhodamine(TAMRA)を修飾した蛍光性アンタゴニスト(TAMRA-Ac-TZ14011)を用いて実験を行った結果、TAMRA-Ac-TZ14011の赤色蛍光が細胞表面に観測され、この蛍光はGFPの緑色蛍光とよい一致を示していた。一方、CXCR4を発現していない細胞ではTAMRA-Ac-TZ14011を作用させても細胞表面に赤色蛍光は観測されなかったことから、TAMRA-Ac-TZ14011が細胞表面のCXCR4に特異的に結合することにより、CXCR4の蛍光イメージングが達成されたものと考えられる。さらに、TAMRA-Ac-TZ14011をCXCR4-GFP発現細胞に作用させて時間依存的に蛍光イメージング実験を行った結果、TAMRA-Ac-TZ14011由来の赤色蛍光が細胞内部においても観測されることが明らかとなった。この結果は、CXCR4の細胞内への自発的なインターナリゼーションを可視化できることを示唆しており、TAMRA-Ac-TZ14011を用いてCXCR4の時空間的な発現動態や機能解析を行うことができると期待される。
|