研究概要 |
申請者は,二核金属の協働効果と水素結合による基質の活性化をコンセプトに触媒的アミド化反応の触媒を設計・合成した。開発した触媒を用いて安息香酸とベンジルアミンのアミド化を試みたところ,目的のアミド化は全く進行しなかったが,予想に反してベンジルアミンが酸化された後,イミンと未反応のベンジルアミンが反応したと思われるベンジルイミンが得られた。この酸化反応は,脱気条件では反応が全く進行しないこと,触媒無添加時は反応速度が大幅に低下することから酸素を共酸化剤とする触媒反応と考えられる。種々反応条件を検討したところ錯体の中心金属はガドリニウムが最適であること,有機溶媒中では反応は,進行せず水中でのみ反応が進行することがわかった。また,興味深いことに触媒はベンジルアミンは酸化するが,ベンジルアルコールは全く酸化しないという官能基特異性をもっ。本酸化反応は水を溶媒とし,加圧条件や酸素雰囲気下,空気のバブリングなどといった煩雑な操作を必要とせず,開放系で加熱攪拌するだけで大気中の酸素を取り込み基質を酸化するという安全で環境にやさしくコストパフォーマンスに優れた特性を持っている。当初,触媒的アミド化反応の開発を目指して始めた研究であったが,研究の過程で予期せず有益な反応に出会うことができた。本反応系は反応性にまだまだ改善の余地があるため,現在酸化力の向上を課題に,触媒の構造最適化,ならびに更なる反応条件の検討(反応温度,濃度,pHなど)を行っている。
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