研究概要 |
申請者は、二核金属の協働効果と水素結合による基質の活性化をコンセプトに触媒的アミド化反応の触媒を設計・合成し、開発した触媒を用いて安息香酸とベンジルアミンのアミド化を試みたところ、目的のアミド化は全く進行せず、ベンジルアミンの酸化が進行することを見出している。本酸化反応は、共酸化剤である酸素を加圧やバブリングの必要なしに開放系で取り込む操作の簡便性、水中で反応が進行するという環境調和性などの魅力ある反応であるため。当初の目的であった触媒的アミド化ではないがこの酸化反応を詳細に検討することとした。種々検討の結果、中心金属はガドリニウムが最適であることや、芳香環に電子供与基や電子吸引基があっても反応が進行することが分かった。また、触媒はベンジルアミンは酸化するが、脂肪族アミンやベンジルアルコールは全く酸化しないという官能基特異性を持つこと、通常反応性の高い2級アミンよりも反応性の低い1級アミンを酸化することもわかった。ベンジルアミンの酸化で得られるイミンが未反応のベンジルアミンと反応してベンジルイミンを形成するために酸化効率が50%を超えないという問題点があったが、この問題についてはヒドラジン存在下で反応を行うことで生じるイミンをヒドラゾンへと変換することで解決することができ、安全で環境にやさしくコストパフォーマンスに優れた酸素酸化反応が開発できた。開発した酸化反応はガドリニウムという希土類金属を用いた酸素酸化反応である。希土類金属を用いた酸素酸化反応は知られておらず,希土類金属の新たな反応性を見出したという意味でも本研究には意義があったと考える。
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