研究概要 |
芳香環化合物は、修飾反応のバリエーションが少ないことや選択的な修飾反応が少ないことなどから、一般に種々の置換基を複数導入することが容易ではなく、簡便に多様な化合物を構築することが困難な化合物である。また、芳香環化合物は医薬、機能性分子、機能材料と多岐にわたる分野で利用される有用化合物であり、そのような芳香環化合物の多様性指向型合成法の開発が求められている。本研究は、ジエノラートの化学を活用することによって、α,β-不飽和カルボニル化合物の多彩な変換能と単工程多段階連続反応を活用し、効率性の高い多置換芳香環化合物合成法の開発を目的としている。 触媒量のPd(PPh_3)_4、Cs_2CO_3存在下、2-シクロヘキセノンとブロモベンゼン誘導体を作用させると、単工程でα位、γ位の各部位選択的な修飾が可能であり、また、芳香環化が同時に進行し、2,4-置換フェノールが一段階で構築できることを明らかにした(<45% for 3 steps)。α位ではMichael付加反応(2-シクロヘキセノン同士の自己縮合)が進行し、γ位ではブロモベンゼン誘導体とのアリール化反応が進行する。 現段階では、収率は改善の余地が残されており、また、適用可能な親電子剤に制限が見られる等の問題点が残る。本法は効率的多置換芳香環化合物構築法として有望であり、現在、α位での親電子剤との反応の適用範囲の拡大を目標とし、基質の自己縮合を抑制する改良型反応の検討を行っている。
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