研究概要 |
芳香環化合物は医薬、機能性分子、機能材料と多岐にわたる分野で利用される有用化合物であり、多様な芳香環化合物の効率的構築法の開発が求められている。しかしながら、芳香環化合物の修飾反応はバリエーションが少なく、また、選択的も低いことから、一般に多様な化合物を得ることが困難である。このような背景のもと、本研究では、ジエノラートのα位とγ位の反応性を活用した「ジエノラートの化学」を活用し、効率的多置換芳香環化合物合成法の開発を行った。 Pd(PPh_3)_4-PPh_3(触媒量)、Cs_2CO_3、モレキュラーシーブス存在下、DMF中80℃で2-シクロヘキセノンにプロモベンゼン誘導体を作用させると、γ位でのアリール化と芳香環化が同時に進行し、4-アリールフェノールが生成することを明らかにした(〜61%)。ビアリール化合物は有用な化合物であり、新しい効率的ビアリール構築法を開発することができた。 また、条件を制御することで、2-シクロヘキセノンのα位でMichael付加反応(2-シクロヘキセノン同士の自己縮合)が、また、γ位でプロモベンゼン誘導体とのアリール化反応が進行し、更に2-シクロヘキセノンの芳香環化が進行するという単工程3段階反応が進行することを明らかにした(〜45% for 3 steps)。この反応によって、2つの置換基を導入しつつ、2デシクロヘキセノンから一挙に2,4-置換フェノール合成を構築することができ、多置換芳香環構築法として大変有望な反応であると認識できる。 いずれの反応も、現段階では収率や適用可能な親電子剤の制限等、改善の余地が残されているが、今後改善することで、効率的多置換芳香環構築法として機能し得ると考える。
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