優れた医薬品製造プロセスを構築する上で有用な新規固相触媒を開発することを目的とし、ポリアクリルアミド系高分子と金属触媒から構成される高分子触媒の設計とその有機反応への応用研究を行い、以下の平成19年度研究成果を得た。 1、イオンユニットを持つポリアクリルアミド系高分子とリンタングステン酸から構成される高分子錯体を用い、水中におけるその挙動を観察したところ、有機化合物を温度依存的に高分子錯体内部に取り込むことを見出した。そこで、この高分子内部を反応場として活用する反応系を構築することを目的として、この高分子錯体を固相触媒として使用する過酸化水素水によるpent-4-en-1-olの酸化的環化反応への適用を行った。その結果、酸化反応は良好に進行し、酸化的環化反応生成物であるtetrahydrofurfuryl alcoholが収率良く得られた。また、反応終了後、高分子錯体を容易に回収することができ、再利用も可能であった。 2、相関移動触媒反応は有機合成上有用な反応の1つである。そこで、高分子錯体を用いる固相相関移動触媒反応の開発を試みた。その結果、過酸化水素水を用いるアミン類からカルボニル化合物への酸化的変換反応が良好に進行することが明らかとなった。 3、新たにイオン性ポリアクリルアミドーポリエチレングリコール複合高分子と過ルテニウム酸塩からなる高分子錯体を調製した。この高分子錯体は分子状酸素を用いる1級アルコール類の酸化反応に有効で、再利用可能な固相触媒として働くことが明らかになった。
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