研究概要 |
前年度の検討結果ならびに本年度の研究実施計画に従い, 種々のケイ素化求核種を用いる炭素-炭素結合形成反応についてテトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパンの有機Bronsted酸触媒としての触媒活性を検討した. まず, β-置換-α, β-エノンと2-シリルオキシフランのビニロガスMukaiyama-Michael反応を検討したところ, anti選択的に反応が進行することを見出した. また, これまで化学量論量のLewis酸触媒の使用が必須とされてきたMukaiyama-aldol型反応の改良を目的として, テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパンを触媒として用いたビニロガス反応を検討し, α-置換シクロヘキサノンと2-シリルオキシフランの反応が僅かに1.0mol%以下の触媒使用量でも円滑に進行することを見出した. これらの検討結果は, 炭素酸触媒であるテトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパンの構造的特徴が優れた触媒性能として発揮された結果と考えられる. さらに, 有機酸触媒としての利用が期待されるフッ素置換1, 3-ジオールないし1, 3-アミノアルコールの新規合成法の開発を目的として, β-ヒドロキシーα, α-ジフルオロケトンN, O-アセタールの収束的な合成法を開発した. 今後, 本反応を機軸とするフッ素置換ジオールやアミノアルコールの合成を検討し, 生成物の有機分子触媒としての利用が期待される. また, Lewis酸触媒反応として, 本年度はインジウムトリフラートを用いたアルデヒド, イソシアニド, アルコールの三成分連結反応(alkylative Passerini反応)によるα-アルコキシアミドの合成法を開発した. この反応は, インジウム(III)塩のソフトかつ温和なLewis酸性と化学的安定性を活用した合成手法であり, 錯体の特性を活用した新規合成反応の開発という本研究の目的に適う成果である.
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