研究概要 |
TLR4はグラム陰性菌の細胞外膜主要構成分子であるリポ多糖を認識する.グラム陰性菌の生体への感染は、エンドトキシンショックと呼ばれる多臓器不全を生じさせる.抗エンドトキシンショック分子標的薬開発に向け,本研究ではX線結晶構造解析法によりTLR4のリガンド認識機構、免疫応答活性化機構を、(1)TLR4細胞外ドメイン、(2)TLR4細胞外ドメイン・MD-2複合体,(3)TLR4細胞外ドメイン・MD-2・LipidA(アゴニスト)複合体、(4)TLR4細胞外ドメイン・MD-2・LipidIVa(アンタゴニスト)複合体、の4つの立体構造を決定することにより明らかにすることを目的としている.19年度は結晶化を行うのに必要な質および量のTLR4細胞外ドメインを得ることを中心に研究を行った.ヒトおよびマウス由来のTLR4について検討した。本研究では、昆虫細胞を用いたバキュロウィルス発現系よりTLR4細胞外ドメインを細胞外に分泌させて、調製することとしている.発現を試みたところ、TLR4細胞外ドメインは発現するものの細胞内に多くとどまり、一部しか細胞外に分泌されていないことが明らかとなった.細胞外分泌シグナル配列やMD-2の共発現系を作成し、安定化した発現を得られる発現系の検討を行った.結果、研究開始時に用いた発現系の約10倍の発現量を見込める結果を得た.結晶構造解析には高純度かつ高濃度の蛋白質溶液を得る必要がある.本年度はその根幹である発現量の改善を行った.
|