TLR4はグラム陰性菌の細胞外膜主要構成成分であるリポ多糖を認識する。グラム陰性菌の生体への感染はエンドトキシンショックと呼ばれる多臓器不全を生じさせる。抗エンドトキシンショック分子標的薬開発に向け、本研究ではX線結晶構造解析法によりTLR4のリガンド認識機構、免疫応答活性機構を以下の、4種類の構造を決定することにより、解明することを目的とした。1. TLR4細胞外ドメイン構造。2. TLR4細胞外ドメイン・MD-2複合体。3. TLR4細胞外ドメイン・MD-2・lipidA〔アゴニズト〕複合体。4. TLR4細胞外ドメイン・MD-2・lipidA〔アンタゴニスト〕複合体。 19年度9月にマウスTLR4細胞外ドメイン・MD-2・エリトラン〔アンタゴニスト〕複合体、ヒトTLR4細胞外ドメイン・MD-2複合体の構造が決定された。そこで、20年度は3のアゴニスト結合型の構造解析を目指した。19年度からの継続的な研究により、付加タグや分泌シグナル配列、発現領域について検討した結果、ヒトTLR4とヒトMD-2を昆虫細胞で共発現することにより、1L培養液あたり、約0.06mgのヒトTLR4細胞外ドメイン・MD-2複合体を安定的に得ることに成功した。アゴニストとの結合条件を検討しながら、結晶化条件を検索したが、回折実験を行えるような良質な結晶を得ることはできなかった。TLR4およびMD-2はともに、糖蛋白質であるため、糖鎖の短鎖化が可能であり、結晶化用標品への精製系が確立している酵母で発現させ、調整したヒトMD-2と複合体を形成させて結晶化を行ったが、結晶を得ることが出来なかった。
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