研究課題
本研究では、ALアミロイドーシスの原因タンパク質である免疫グロブリンL鎖可変領域ドメイン(V_L)について、アミロイドーシス発症の分子的メカニズムの解明を目指している。アミロシドーシス患者由来V_LについてNMRによる物理学的手法から、その変性状態での動的構造を明らかにし、さらに変性構造に関わるアミノ酸変異による変性構造変化とアミロイド線維形成の影響を調べ、両者の関連性を証明することを目的とした。1)NMR解析Wild-type、Wil、Jtoの3種について^<15>Nラベル体、^<13>C^<15>Nダブル標識体を調製し、pH2の変性条件におけるNMR解析し、HSQCスペクトルの帰属を完了した。さらにそれぞれの還元アルキル化体のNMR解析も行い、帰属も終えた。3種のV_Lについて緩和解析をおこなったところ、変性したWild-type、Wil、Jtoは、いずれも3つのクラスター形成が見られた。それらの程度はWilが他よりも小さいことが分かった。さらにSS結合を切り離した還元アルキル化体では、いずれも3つのクラスターが減少した。即ち、変性状態においてSS結合がクラスター形成の保持に寄与していることが明らかとなった。2)アミロイド線維形成解析Wild-type、Wil、JtoについてpH2の変性条件下でアミロイド線維形成実験を行った。その結果、Wild-type、Jtoに比べWilは線維化が遅い結果となった。さらに還元アルキル化体では、いずれもSS結合体に比べ線維化が遅くなった。即ち、NMRで明らかにした変性状態でのクラスター形成がアミロイド線維化に関係することが分かった。また、配列比較によりWilに存在する3つヒスチジン残基がアミロイド線維に重要な役割をしていることも明らかにし、ヒスチジン残基の変異により生理的条件下でのWilのアミロイド線維化を阻害することに成功した。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Journal of biochemistry 144,5
ページ: 619-623