これまで糖鎖水酸基の関与する水素結合の情報を抽出するために、13C-NMRを用いて糖鎖ヒドロキシルプロトンの溶媒との交換速度の算出方法を開発し、Lewis x糖鎖のヒドロキシルプロトンの水素結合形成にともなう交換速度の低下を観測することに成功してきた。今年度は、オリゴ糖鎖のみならずアミロースやべータグルカンなどの多糖に本方法を適用した。その結果、アミローズでは鎖長に依存せずにO3や水素結合形成が観測されたのに対して、ベータグルカンの場合では鎖長に依存してO2で水素結合の形成が観測されるようになった。これらの知見は多糖のヘリックス形成の構造基盤を明らかにする上で基礎的な知見となる。 また、前年度に引き続き13C標識を施した高分子量糖タンパク質糖鎖のNMRシグナルの帰属法として13C検出型のNMR測定を検討した。その結果、分子量5万程度の糖タンパク質に関しては、13C-TOCSYに比べて13C-NOESY計測の方が高感度にシグナルを検出できることが判明した。13C直接検出を利用した本帰属法はHCCH-COSY/TOCSYなどの1H検出型の帰属法と相補的であり、両方法を併用することにより高分子量糖タンパク質糖鎖のシグナルを効率的に帰属することが可能になると考えられる。
|